新刊のおたより(5月)


ケガ、大変だ!
 あぁ、スウェーデンの話なのだ、と思わずため息が出ました。絵はベタ塗りが多い日本の絵本と違って、色が抑えられた絵本になっています。ふざけていて落ちて血が出た話です。どくどくと血が出たとなっています。大騒ぎです。みんな集まってきて取り巻いています。もちろん先生(名前で呼ばれています)も駆けつけてきて、日本なら救急車が呼ばれて大騒ぎ?か先生が担ぎこんで病院へというところですが運ばれたところは校長室。そして、傷を調べて大きな絆創膏が貼られます。僕は見に来たみんなに繰り返し話します。それにびっくりしたのは「ケガ」という題で授業、国語ではダジャレでケガの詩を書き、算数ではこれまでにケガをした数を数え、もちろん絵も描く、赤のクレヨンが足りなくなったとのこと、みんなにちやほやされて、ケガは痛いけれどいい気持ち、1週間位たって先生にもう治ったと言われて絆創膏をめくると傷は大きくなっているけれどかさぶたになっていました。そして学校でプールに・・・・大笑いするようなことが起きたのです。日本ではすぐ責任問題です。
 子どもたちの表情がいい、家の人が出てこないのも日本と違っていい。ケガを通してどんな気持ちになるかという、作者の狙いは十分描かれています。伸びやかな子どもたちの様子がユーモアいっぱいに描かれています。やっぱりリンドグレーンの国なのですね。
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「ケガをした日」エンマ・アドボーゲ 作  菱木晃子 訳
 ブロンズ新社刊 本体1600円+税

遊ぼう 遊ぼう 言葉で
 この頃、赤ちゃんの来店が少なくなった。働いているママが多くなって、その分保育施設に預けられることが多くなってきた。ちょっと心配なことがある。赤ちゃん、全体的におとなしい。声を立てて笑う赤ちゃんがあまりいない。笑うのだけれど、おとなしい。言葉かけが少ないのではないかと思ったりする。帰りに手のひらなんかに、ツンツンとしてバイバイするととっても嬉しい顔になる。この絵本は赤ちゃんに声がけして遊ぶのにはとってもいい。言葉のリズム、あまり意味がないけれど、絵もきれい。真ん中の開きーわっちょいやーかけごえみたいに虹が開く。
 最後にーわっぱーん。
ーおしまい おしまい つん こん ぱっー
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「つん こん ぱっ」 こぺんなな  福音館書店刊
               本体900円+税10%

アラスカのむかしばなし
 ワタリガラスは日本のカラスと似ていますがもっと大きくて鳴き声も違います。このお話のワタリガラスはアラスカに住んでいて、アラスカにはワタリガラスが登場するたくさんの話があってこの絵本のようにいたずら好きで賢く、世界を変える時大きな役割をを果たします。ワタリガラスで思い出すのは星野道夫さんです。ワタリガラスを追いかける途中、事故に遭い、亡くなったのはまだ記憶にあります。その星野さんが親しくしていたアラスカのクリギット族(私たちと同じモンゴロイドの人種)に伝わるお話で作者はその語り部で詩人です。作者のボブ・サムさんの家系はワタリガラス、ワタリガラスの物語はワタリガラスの家系の人しか語ることはできません。星と月と光(太陽)をこの世界に与えたワタリガラスのお話を画家が独特の手法で絵本に仕立てました。訳はボブ・サムさんと親しかった谷川俊太郎さんが協力者をえて色鮮やかな絵本になっています。
私は2009年に出版された「かぜがおうちをみつけるまで」という著者の小さな詩集を持っていて(下田昌克・絵)大切な蔵書の一冊です。
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「よあけのはこ」ボブ・サム 語り あずみ虫 絵
谷川俊太郎 訳 あすなろ書房刊 本体2000円+税

ゆめありますか

 ルウェリンはびんのなかにいろんな夢を入れて持っています。空を飛ぶこと、へんてこりんな
夢も、綺麗な夢も。ある日、ひとりぼっちでちょっと寂しい時に同じような友達を見つけたのです。それなぁにと聞かれました。なんと友達は二人です。ルウェリンが話すと二人もいいねと言ってびんのなかに夢を集めました。そしてとっても楽しんでいる時、大あらしがきてなんとびんはみんななくなってしまいました。でも、探すとたった一つ残っていたのです。そしてそのなか
には。
 あなたは夢がありますか。びんのなかに入れて大切にしていたら、夢は大きくなって飛び立ちます。そして、あなたの願いは叶います。きっと!
 色彩の綺麗なゆめいっぱいな絵本です。
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「びんのなかのゆめ」デボラ・マルセロ 作
 なかがわちひろ 訳  光村教育図書 刊
 本体1600円(税別)

 キューは多摩動物園にいるオスのオランウータンです。1970年の夏、横浜港に来た外国船の中で発見されました。密猟者によって運ばれてきたと思われます。そして多摩動物園にその頃おそらく2歳〜4歳くらいだと思われていて、それからずっとここで暮らしています。日本にいるオランウータンはほとんどが日本の動物園で生まれそだっていますがキューは違います。キューの故郷は遠いボルネオです。その熱帯雨林の国、ボルネオの様子が描かれています。作者はキューを育て、今は環境保全活動をしています。私たちとは直接あまり関わりのないように思えるボルネオの熱帯雨林、そこは地球の温暖化と乱開発のことで今消えてなくなりそうになっています。キューというオランウータンを通じて考えていこうという本です。写真がいっぱい、たくさんの動物たちのことが載っています。キューの哲学的な威厳のある表情、キューを通して私たちはもっと関心を持ち、するべきことを考えなければいけないのです。
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  「キューのふるさとはボルネオの森」 黒鳥英俊 文
  横塚眞己人 写真・構成 偕成社刊 本体1600円+税

いいこといっぱい
 ダニエルはおじいちゃんになにかいいことあった?と尋ねられて、公園に探しに行きました。まずお気に入りの岩に登り岩に聞きます。なにかいいことあった?特にいいことはなかったな、わしは100万年もの間ここにいる。ずっとお日様の光を浴びているんだ。お前はどうじゃ。口笛が吹けるようになったよ、得意そうなダニエル。こんな調子でダニエルはみんなに聞いて回ります。いろいろな答えがあります。ダニエルも答えます。それにいろいろの発見があります。そうです、ダニエルは大きくなったのです。子どもの弾んだ声、おじいちゃんのダニエルの成長を喜ぶ返事、読者も一緒にいいことを探します。コラージュの絵が喜びに満ちています。あなたもいいことを探してみましょう。暖かい心がいっぱいになる絵本です。
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「なにかいいことあった?」ミーシャ・アーチャー
  石津ちひろ 訳 BL出版刊 本体1700円+税

こうじょうちょう?
 失礼だけれどどう見てもこのこうじょうちょうはそうじきみたいだよ。そしてこのこうじょうちょうはピーナツが大好き。おまけにお腹いっぱいに食べると居眠りする癖があるのだ。だからそうじきとして売られてしまった。でも本人は居眠りしていて気が付かない。買った人が変だと思って修理工場に持ち込んでやっと目が覚めた工場長。なんともおかしいお話だ。アハハ!ゆかいゆかい。
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「そうじきにまちがえられたそうじきこうじょうのこうじょうちょう」 
 へんみあやか 作 こどものとも6月号
 福音館書店刊 本体418円+税10%

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