新刊のおたより(3月)


ユニークな絵がいっぱい
 しんぞうとひげに手足がついている、このシリーズの絵(3巻ともティンガティンガ・アートで描かれている。この描き方は1968年にタイザニアのエドワード・サイディ・ティンガティンガさんがはじめた絵の描き方で6色のペンキを使って下書きをしないで描かれているという。この本も開くとタンザニアの自然や動物が素朴にのびのびと描かれている。この巻は愉快なお話が収録されているので本文いっぱいに描かれている絵を見るだけでも楽しい。しんぞうはどうしてドキドキするのか、ひげはどうしてはえているのか、そうかそうだったのか!アフリカの昔話が絵で蘇っている。奇想天外なお話は「きょうのはなしは、これで おしまい。ほしけりゃもっていきな。いらなきゃ 海にすてとくれ。」でおしまい。もちろんもっていくよ。
 自分で読んでも絵いっぱいの短いお話は愉快!ゆかい!
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「しんぞうとひげ」 3 ゆかいなはなし 
ティンガティンガ・アートでたのしいアフリカのむかしばなし
しまおかゆみこ編・再話 ムブカ、レイモンド、チャリンダ絵
かもがわ出版刊 本体1800円+税

どろん どろん!
 どろん!どろん!せっしゃはにんじゃ。なににばけようか。このにんじゃは色で化けるのが決まり。例えば黒いペンギンが現れた。そしてペンギンは氷の上をぺた、ぺた、ぺた。オレンジ色は人参。ゴロンと人参、うさぎもいるぞ。作者は画家らしく色にこだわり。そして、他の作品でもそうなのだけれど、言葉がユニークでとぼけた画風が楽しい。こどもたちは「せっしゃはにんじゃ」と言って変身するだろう。そばに描かれているタヌキもとぼけた表情が楽しい。しっかり絵巻ものを持っているぞ。変身どろん!
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「せっしゃは にんじゃ」北村人 さく
こどものとも年中向き4月号
福音館書店刊 本体418円+税10%

宇宙でトイレに行くには
 大西飛行士が、米スペースX社の宇宙船ドラゴンで上空約400キロの軌道を回る国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。船長として約半年間にわたり滞在し ー朝日新聞17日朝刊よりー
 ところでこの本の内容、宇宙でウンチをどう始末するか?生物である以上どんなものもウンチ、オシッコをする。オシッコもさることながら、ウンチの始末は大変だ。さあどうする。はじめはトイレがなかった。予定時間15分、でも思いがけず長引いてしまった。NASAではアポロ飛行士はどうしただろう。放送作家なので文・絵ともとてもわかりやすくユーモアを交えて書かれている。見えないところの科学の力、縁の下の力持ち、人類の進歩にはこういうこと、研究をしている人がいる。最後のページの「おもしろウンチ情報」もおもしろい!
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「宇宙でウンチ」A.ボンドー=ストーン&.C.ホワイト作
L.ケンセス絵 千葉茂樹 訳 あすなろ書房刊 本体1500円+税

わぁ!たべられちゃった
 ねずみはおおかみに食べられてしまいました。さぁ!どうする。どうもしません。おおかみのおなかの中にはすでに先客がいました。アヒルです。元の世界に戻りたいよねと聞くとあひるは全然と言います。どうして?ともかく一緒に踊ろう。イェ!!おおかみはおなかの中がゴロゴロ騒々しくて困ってしまいます。するとおなかの中から声がします。「そういう時は上等のチーズを丸ごと食べて、上等のワインを丸ごと飲むといいよ」アヒルの知恵、ともかくおかしい話です。読んでいて思わず大笑い。イェーイ!だからおおかみは今でも月に吠えるといいます。
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「おおかみの おなかの なかで」マック・バーネット文
 ジョン・クラッセン絵 なかがわちひろ訳 
 徳間書店刊 本体1700円

私が大きくなったら
 ねえおかあさんで始まる母娘の話。私がおとなになったら、おかあさんといっしょにしたいこといっぱい。私はおとなになったからなんでもできるのだよ。野生の黒い馬に乗せてあげる。深い海に潜って貝を拾うことも、難問の算数を解いたり時速160キロで車を走らせたり、なんでもできるんだ。私は大きくなったら、いいこと教えるよ。いつかおかあさんよりずっと大きくなって、喜ぶことなんでもしてあげると言う娘。そしておかあさんができなかったことはなんでもできると言う娘。母、娘、永遠の絆。そう、私の時代にはもう女だってなんでもできる。私は広いせ世界を見にいくの。おかあさん待っててね。私はあなたの娘。
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「おかあさん、いいことおしえてあげる」シャーロット・ゾロトウ 文
 ジュリー・モースタッド 絵  クレセント・ドラゴンワゴン あとがき
 福本友美子 訳 工学図書 発行・発売 本体1800円+税

私はサメだ
 さしずめ現代の日本でいうと主人公の女の子は寡黙症、もしくはアスペルガーと名付けられるかもしれない。小学校2年生、ほとんど口をきかない。大きな音は大嫌い。みんなと一緒の行動するのは嫌い。サメにこだわっていて、自分もサメだと思っている。当然クラスでは浮いた存在だ。本人はそれでいいと思っている。担任の先生はなんとかしゃべらせようとするけれど、イェニーの気持ちは理解できない。一人で静かに本を読んでいたいのに、わかってくれない。大きな声で考えるということも理解されていない。そして本人はそれを困ったこと改めることだとは思っていない。ある日迷子になった水族館で本物のサメに出会って、意志を通じ合う?ことができたと思い嬉しくなる。そんなイェニーにも友達ができた。同じように一人で何かに(この場合絵を描く)夢中になるとあまり周りのことを考えなくなる子だ。そんなイェニーもおじいちゃんの家に行くうちに、おばあちゃんを亡くして引きこもっているおじいちゃんを庭に引っ張りだすことに成功する。はじめ、題だけ見てどんな本かと思ったけれど、読んでいて思うことがたくさんだった。とかく私たちは自分の考え思いが一番だと思い、それとちょっと違う人を排除、または矯正しようとする。そのことがいいことだと思っている。いろいろな人たちが生きている中で、世の中の基準に当てはめようとする。子どもの場合、それは困ったこと、将来困ったことになると思ってしまう。でもそれが幸せなことかはわからない。共存の難しさだ。でもどうであろうと人それぞれに生きていくのが一番いいことなのだと思う。ほとんど学校が舞台なので、やっぱり現代の日本の子どもたちをみると思うことがいっぱいだった。スウェーデンの本、2007年新人賞をもらっている、2作目の「天気ゲーム」が楽しみだ。
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「サメのイェニー」リーサ・ルンドマルク 作
シャルロッテ・ラメル 絵 よこのなな訳
岩波書店刊1700円

なにがいるのでしょうか
 パパとお兄ちゃんが車を庭で洗っているところにエルシーが駆け込んできました。「テーブルの下に何かいるよ」駆けつけてみると灰色の大きなゾウでした。「一緒に洗おうよ」ママがお兄ちゃんと買い物から帰ってくるとエルシーが駆けてきて、「テーブルの下に何かいるよ」それはカンガルーでした。そんな調子でテーブルの下には次々と動物たちが現れます。とても楽しいナンセンス絵本です。それは登場する動物やものにみんな目が付いていて、しかもその目が好奇心いっぱいの表情だからです。家族はテーブルの下に現れたみんなで海に行って楽しく遊びます。ユーモアいっぱいの絵本、まるで本当のことみたいです。とぼけたような表情に思わず拍手!いいな。いいなあ!
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「テーブルのしたになにがいる?」アラン・アールバーグ 文
 ブルース・イングマン絵 とたにようこ 訳
 徳間書店刊 本体1800円

水はふしぎ
 水はふしぎです。形がありません。流れている状態から何かのものに入っている
様子から。形は縦横に変わります。水を地面に落としてみました。ぽた、ぽとぽと。地面に手一杯の水を落としてみました。ぽた、ぽとぽと、ずるずる、線を描いた。どんなものでもかけるよ。お水足りないよ。よいしょよいしょ。何が描けただろうか。みんなもやってみた。画家のお話はいつも次々と子どもたちがふえていく。はじ
めは見ているだけだけれど、いつの間にか一緒になってみんなで大きなものを描いた。子どもたちの表情が楽しい。好奇心いっぱい、そしてできたものへの満足感。やった!折り込み付録に科学のことが書かれています。(2025.3.5)
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「おみずでおえかき」ちいさなかがくのとも 4月号
花山かずみ さく 福音館書店刊 本体418円+税10%

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