えるふ読書会


*読書会 「ゲド戦記を読む」
*定例月1回 毎月第3土曜日 10:00〜11:30
*資料 ゲド戦記リストと作者ルグウィンについて
 初回   7月20日(土) 1巻 1〜5章 ←リンク先に飛びます
 第2回  8月24日(土)    1〜5章 ←リンク先に飛びます
 第3回  9月21日(土)    5〜7章 ←リンク先に飛びます
 第4回 10月19日(土)    最終章まで ←リンク先に飛びます
 第5回 11月16日(土) 2巻 1〜5章 ←リンク先に飛びます
 第6回 12月21日(土) 6章からラストまで ←リンク先に飛びます
 第7回  1月18日(土) 2巻 こわれた腕輪ラストまで ←リンク先に飛びます
 第8回  2月22日(土) 3巻 1〜4章 ←リンク先に飛びます
*会費 500円(消費税込み)高校生以上 高校生は無料
*定員 7名
*場所 会留府


ゲド戦記 第1回 読書会
第1回 7月20日 参加者5人 読書会ガイダンス
 課題 ゲド戦記 1-5章
 資料 ゲド戦記リストと作者ルグウィンについて
  ⭐︎トピック 
○ルグウィンは、アンデルセンのどこに惹かれたのか?

彼(ゲド)に判断を誤らせたものは?若さゆえの傲慢さか、彼と争うことになった学生の存在は罠だったのか?
 彼の未熟さが顕になる。抜け殻の様になった彼を救った者たちは?
 彼が呼び出してしまった闇と対峙しながら回復できるのか?
⭐︎ここまでの解釈について
 再読する中で、読み手の年齢の変化で読み方が変わる。何故?


第2回 8月24日 参加者7人
 課題 1-5章
 資料 翻訳者清水真砂子さんについて
    公立共済友の会だより Vol.159
トピック
○ SFやファンタジーがあまり読まれない今日この頃、今この物語を読んで欲しい年代に理解されるのか。
  本来なら子どもが大人になるために必要なプロセスが描かれているが視覚的刺激の媒体が増える中、
  内面の葛藤やそこを乗り越える力を身につけてゆく事を視覚化する事は難しい?優れたアニメやコミ
  クスも多いが。
○友人との人間関係の中で実感として人に光の部分と闇がある事を知ってしまい、自分も同じと知る時、
  初めて「ゲド戦記」が必要となるのかもしれないとの意見あり。
 
 幼い頃から子どもたちが字を読む様になりその先字は読めるけれども行間や中身を読む作業がおろそか
になると、様々な事象から類推して自分の内面を見つめる力がどこで培われるのか?
 読書をする事で生きる力を手にできるとすれば、そのプロセスとはどのようなものなのだろうか?子ど
もたちに望むとすれば。本来日本人は聞く文化を持ち絵を読み解く力も育まれてきたはずで、その先今度
は物語を自分で読む事で思考を巡らせながら読書が1つの体験となり、その体験がその後の人生を支える
事にもなると大人は実感する。とは言え、自分の体験の中で他者の中に裏と裏、光と闇の存在を見た時、
同時に自分の中にもそれが存在する事に気付くこともあり、認めたくない様なこの二面性をどの様に取り
混んで折り合いを付けるのか、年齢を重ねても正解を導き出す事は難しいのも事実。だからこその両方を
内包しつつどの様に生きてゆくかを考える読書会にと期待する。
 
 さて主人公ゲドはどの様に闇を取り込み、生きる道筋を見つけたのかをまずは読み取る事に。
 ただし、巻号が進むにつれてルグウィンジェンダーの問題も語リ始めるので物語は複雑な様相を見せる
ので歯応えは充分。どう考えても物語が「父親殺し」には行きつかない事だけは付記しておきたい。

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第3回 9月21日 参加者6人
 課題 ゲド戦記1影との戦い 5-7章

今回のテーマ
 ゲドは思春期の未熟さゆえの高いプライドに比べて、修行する中で学ぶべきことも理解しないまま形だけの魔法を使い、世界と自分を危機に晒すような失敗を犯す。それでも彼を支えようとする多くの援助者の助けを借りて学院で学び直し魔法使いの仕事をしながら彼が呼び覚ましてしまった闇と戦う旅に出るまで。

トピック
⭐︎ 未熟であるとは言え、潜在的なゲドの魔法使いとしての天賦の才能を学院の長たちは認めていた。将来大賢人となる事も織り込み済みで闇を呼び出し殺されかけたゲドを救うため大賢人ネマールは命をかけた。そしてゲドにその未熟さを克服させるため長達は学院にゲドを留め置いて体を回復させ修行を続けさせる。荒削りのままヒスイのように放り出しては害をなすと思ったのか?傷も癒えた頃。ゲド自身も落ち着きを取り戻し、自分を見つめ直して、様々な後悔に苛まれながら修行して魔法使いとしての旅立ちの日を迎える。

⭐︎ ゲドを煽り影を呼び出させたヒスイの役割は?
 ヒスイだけが学院を追われたのはなぜか? 賢者としての資質がなかったのか? もう一方で物語の中でどの様な装置としてヒスイが存在したのか? ゲドにとって思春期の苛立ちを際立たせるためにヒスイは存在したのか?

⭐︎ ゲドと3人の女性たち
 最初にゲドをそそのかし、影を呼び出させたゴンドで出会ったル・アルビの領主の娘についてその時、ゲドはそのかされて闇を呼び出そうとしたものの、そこまでの力が無くオジオンに諫められる。

 ゲドはまた、p94に登場する魔法使いとして名高い学院の卒業生のオー島の領主とその妻が登場した時にヒスイに煽られ怒りを増幅する。

 学院からゲドは魔法使いとしての旅を続けるが、ある思惑を持ったテレノン宮殿の領主の妻が自分の目論見を果たすためにゲドを誘惑する。

 この3人の女性はゲドを惑わし支配しようとしたのか? 物語の中では単なる誘惑者か? 成長に必要な乗り越えるべき課題か?

⭐︎ ゲドの支援者
 学院の9人の長たち オジオン カラスのエンドウとその妹 オタクのゲドへの関わりは? 甘やかしか? 叱咤激励か? ゲドに寄り添い彼の気づきを引き出すよう、寄り添ったのか? 後年ゲドにどのような影響を与えたのか。

⭐︎魔法使いとして派遣された島で病の子どもを救えなかったことの意味 
 命が尽きようとする子どもを呼び戻そうとする途中、闇に会い、救出できなかった?
 病に苦しむ子どもを救う事は人の生き死にまで関わって、世の均衡が崩れる? それとも救う能力があれば許されたことなのか?

次の章からはゲドが呼び出してしまった闇に追われるのでは無く、支援者の力添えを得て追う立場に。
戦い方が変わる中で、ゲドは闇との戦いにどのような決着をつけるのか?このアプローチの仕方が思春期の課題解決の糸口になるのか?


次回は10月19日 8-10章 いよいよゲドと闇の決着の時。

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第4回 10月19日 参加者 5人
課題 ゲド戦記1 影との戦い 最終章まで
今回のテーマ 
 ゲドは影を放ち自分ばかりでなく周囲を危険に晒すが、内なる影を認め追われる立場から影を追う立場に。目を背けるのではなく、取り込む事で全き人間になる成長の物語が完結する。ゲドは「傷は癒えた。おれはひとつになった。もう自由だ」と涙ながらに宣言する。
 これ以降、ゲドの「自分自身の本当の姿を知る者は自分以外のどんな力にも利用されたり支配されたりすることは無い」という自覚が、大賢人として長きに渡る闘いの武器にも、後に続く若者達を教え導くための羅針盤ともなる。
 トピック
 ◯ ゲドの成長に誰が援助者になったのか?
 ◯ それが家族や血のつながりのある者ではないのは何故か?
 ◯ 血縁だけで子どもの成長を支えるには限界があることは明らかだけれども、個の成長の捉え方が違って見えるのは文化的な差異によるものか?
  成長の先に本来なら次の世代を育てる役割が見えるはずだが、現在の日本社会では親による庇護の時間が長く、自立が阻害され次の世代をを育てるどころではない場面も。本来は自助→共助→公助という流れの中で自立が果たされるはずだが。実際にそのことで、50→80問題さらに60→90問題にまでもつれこんでおり親の支援にも限界が。
 ◯ どのタイミングで自立を目指す子の手を離し、他者に繋いで自立の芽を育てたら良いのか?
次回は
 ゲド戦記2巻目「こわれた腕輪」1-5章「影との戦い」で竜退治の冒険を終えての数年後、全き人として賢者となったゲドが知恵深き魔法使いとして争いの絶えないアースーシーの世界に平和をもたらすべく旅立つ。
 2巻目のもう1人のキーマンは、名もなき者たちの支配する暗黒の世界のアルハに選ばれし少女テナーだ。ゲドとテナーの関わりが物語を動かす。

次回は11月16日(土) 2巻1章-5章

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第5回 11月16日 参加者6人
課題 ゲド戦記2「こわれた指輪』1−5章
今回のあらすじ
 アチュアン唯一の墓所の大巫女が亡くなり、その継承者として見出されたテナーは家族から引き離され、
 名を奪われて食らわれし者=アルハとして墓を守り、生涯墓所を出る事なく祭祀を行い、大宝庫を守る大
 巫女になるべく修行をさせられることに。
 墓所にある大宝庫にはエレスアクバの割れたお守り=腕輪があり、魔法使いが侵入しそれを取戻そうと墓
 所に来ては処刑された。
 割れた腕輪の半分は墓所に納められていたが、もう半分は魔法使いが持ち出して小国の王ユパンのソレグ
 に手渡した。それこそがゲド戦記1でゲドが手に入れたこわれた腕輪の片割れであった。
 ゲドは指輪のもう一つの片割れを手に入れるべく墓所に侵入し囚われる。
見どころ
 墓所の見取り図の綿密な描写。
 名を奪われアルハとなったテナーが何の疑問も持たずにアルハとして墓所を廻り大巫女になろうとしている
 時、墓所に侵入したゲドを神聖な墓所を荒らす冒涜者と認識し、名もなき者達が何故ゲドを殺さないのかと
 疑問を持つ。ところがゲドを見てテナーの心はかき乱される。なぜか?
 ゲドの目的はなんだったのか?。結果的には?、あるいは隠しテーマとしては世界の秩序を守るだけではな
 いような。
 これは次回を待つことになるけれども、ゲドにとってテナーの存在はなに?とすれば2巻目は実は〇〇ストー
 リーだった?
トピック
 テナーの父は娘の価値を認めない一方で母は諦めきれず抵抗する。
 墓所を守る大巫女の存在意義は?
 指輪のもつ意味は?
 ゲドは敢えて捉えられた?
 テナーの葛藤はなぜ生まれたのか?ゲドに心惹かれたという表現だけでは言い尽くせないのは何故だろう?
次回 12月21日 6章から最後まで
 テナーの葛藤の意味とゲドとテナーは互いに相手をどう認識してどうなりたいと思ったかが明かされるはず。

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第6回 12月21日 参加者4人
課題 ゲド戦記2 「こわれた腕輪」 6章からラストまで
読めば読むうちに初めて読んだ時に比べると引っかかるところが多くまとめきれないため、感想を含めてまとめは次回に持ち越すことに。
*タイトルの「こわれた腕輪」の意味
 1 腕輪の片割れを所有していたゲドが、腕輪の片割れをを探し出し修復して失われた神聖文字を復元してアースーシーに平和を取り戻すための冒険 P230 6行目から
 2 もう一方で腕輪のもう一方の片割れを守るテナーと、もう一方をもつゲドの出会いと共に旅立つ象徴か
*食われしものになったテナーは名を失い、アルハとしてアチュアンの王と王付きの巫女ら支配者にアチュアンの闇の部分、例えば罪人の処刑、王墓の管理、宝物庫など人目に晒せない部分を担わせられることに。
 ところがテナーの取り巻きの若い巫女のペンセはアルハという役割の理不尽さ、胡散臭さに無意識に感づいていてアルハに一目を置いているように振る舞うが、巫女になるくらいならぶた飼の妻になった方がましと思っている。
 アルハは自分に与えられた権力に魅了されてペンセの話に耳を貸さないが、その仕事に疑問を持つたびマナンに言いくるめられ、なんとか過ごして来た。
*そのような時、外の世界を知るゲドに出会う。
 ゲドに闇の守り人をやめるために名を取り戻し、この国を脱出する様説得される。
 様々なことに気づいたテナーをアルハにはふさわしくないと気づいた王付きの大巫女コシルは利用価値のなくなったアルハ排除に動く。
*結局アルハを実質保護して来たマナンを殺し、名前を取り戻してゲドと外の世界へ。
 P 197でゲドはテナーに感謝して腕輪を完全なものにする。一方テナーの不安がP 231の最後の5行から描かれている。
 テナーの不安はその後のゲドの態度でますます増幅され(P 237の最後5行から)、大きな動揺を見せゲドに刃を突きつけアルハに戻りたいとさえ思った。
 P 239の6行以降
*そしてP 239のラスト5行でこの物語が単なるラブストーリーではなく自由の重さを自覚しつつテナーに自立せよとルグウィンがテナーを促した様に思う。ゲドがそれをテナーに伝えたのではなく。ルグィンが全面に登場した。

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第7回 1月18日 参加者5人

課題 ゲド戦記2こわれた腕輪ラストまで再読

前回の読書会では「こわれた腕輪」についてふに落ちないことが多く再読してもう一度読書会をする事にしました。

今回参考図書二冊
1 河合隼雄 長田弘「子どもの本のへ」
  岩波現代文庫文芸364 2025年2月17出版予定
2 河合隼雄   「子どもとファンタジーコレクションII ファンタジーを読む」岩波現代文庫 社会/255 品切れ

河合氏によれば ゲド戦記1は 青年期、ゲド戦記Ⅱ は中年期、ゲド戦記Ⅲ は老年期 の課題について述べられている。

 ゲド戦記Ⅱの中年期ではある程度の名誉・社会的地位が固まって来たゲドにとってはそれまでの課題解決とは異なり本人には必要不可欠なのに言語化しにくいものである。
 テナー、ゲドそれぞれにとっての問題解決のために互いが必要不可欠だけれども、男女愛情を超えたところのお互いの理解と信頼が必要となる。そこにたどり着くにはできるだけの努力が必要だが、あまりにも苦しい事なのでテナーはゲドに憎しみを抱き殺意さえ覚えるのもうなづけるとのこと。

 今回の読書会では参考図書もあり、少し読書会に参加するメンバーの解釈が整理されたように感じたけれども、読めば読むほど難しかった。

 ゲドとテナーの感情のズレは、年齢的にも経験的にもゲドにとって中年期の課題克服だが、テナーにとっては青年期の課題克服であった事ではないか。
 テナーが名もなき物になった事で得た庇護者や地位を捨てて名を取り戻して自立することが方向性として正しいとしても、それを支える者の不在感が否めず、孤立無縁に感じられる時期があるのは何故か。
 ルグィンはテナーに自立の厳しさを突きつけるにしてはゲドに甘い。
 テナーはもう少しゲドに庇護されたかったのでは?にもかかわらず、ゲドはテナーをオジオンのところに導こうとさえする。
 ゲドの行動はあえてなのか元々男女の関係に埋没したくなかったのか?
 導く相手の扱いとしては3巻に登場するアレンとの差がありすぎやしないか?
 ゲドが異性だからテナーに、自立の先のイメージを与えられないのか?
結果的にはそのことでテナーの問題解決はゲドを差し置いて進行し、テナーとゲドの関係は逆転するのだけれども。
とはいえ、「だからその後の人生を獲得出来たでしょ?」というのもストンと落ちないのはどうしてだろうか?
女性が自立する事についてのルグィンの期待が強く感じられるものの、ルグィン自身の境遇の中での揺れが反映されていて自身の問題解決、正解にたどりつけていないような印象を持つ。だからこそ、こうであったらいいのにと厳しい課題を乗り越えたテナーを形にしたのかしら?
とはいうものの、その後の力を失ったゲドの姿を晒すのもどうもねと思う。

 経済的な自立も含めて女性の場合、男性のあり様をなぞっても、問題解決にはならないことは百も承知だけれども本質的な自立に必要なものは何かとつくづく考えさせられる。寄り添う人の存在はマストとして、共依存ではなくアシストする人側についても想いを馳せる必要があると感じられた。

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第8回読書会 2025年2月22日 参加者6人
課題 ゲド戦記3巻 1〜4章

*内容の要約について、
 読書会を進める中で、その後の冒険を理解するためには意外に見落としがちだけれども今回の冒険の発端とそれがどう変化し、結末を迎えたのか、その結末の必然と偶然を見る方が理解が深まるような気がしてやや長くなります。
 必要のない方は読み飛ばして下さい

ロークにエンラッド諸島を治めるモレド家の後継アレンがやってくる。
この世界で邪なものが活動を始めた証拠が見えはじめたので、父が危機感を覚えて賢者に相談するために息子を派遣した。
アレンは悪の本性が暴かれ、打つ手を教えてもらえれば国(エンラッド)に戻り父に伝えたいとのこと。
アレンの祖先は魔法使いでアーキペラゴ全土を治める王であった。
アレンの来訪を受けて、ゲドは長たちを集め、相談の会合を開く。
あの腕輪が一つになり、神聖文字を取り返した。世の中が平和になり秩序が回復した。しかし大賢人ゲドは、すでに魔法の
力が弱まり、不安定さが増して来た事に危機感を覚え、魔法が強力に効いているうちに災いの元を確かめに行くべきと考え
ていた。
長、つまり7人の魔法使いたちは、「統治者マハリオン亡き後ハプナーの玉座に立つ者について、生前マハリオンは暗黒の
地を生きて通過し真昼の岸辺に達した者が後を継ぎそれは魔法使いだと予言した。」ということもあり。この度のゲドに帯
同する候補者に自分たちも入ると考えていた。
しかしゲドは自分がアレンを連れて出かけると宣言した。
だが、呼び出しの長は世の中の均衡が崩れ大いなる災が迫っているならアレンを連れて行く事が正しいのか、まだ自分達に
隠していることはないのかと供をするのは自分と食い下がる。

ゲドは守りの長に、太古の言葉で、裂け目が生じておりそれを探しに行く、もし自分の力が及ばなければあなたが代わりに
出かける事になろうから待っていてくれと頼む。
ゲドは魔法使いである守りの長が魔法使いでもないアレンを共にすることへの抗議であることも理解した上で、守りの長が今
後するべき仕事を理由にここは譲歩することを頼む。ゲドの本当の狙いは?

ゲドはアレンにはこれからの旅はエンラッドに戻る安全な旅では無く目的地も分からぬ危険な旅になるので一緒に行くかどう
かを自分で判断するように言う。
アレンはゲドから強い子であり運命の子なのだから死の淵への旅に出ようと言われたものの、なぜか誇らしい気持ちで帯同す
るまでには至らないまま旅に出かける。このあたりのアレンの自信のなさから生まれたモヤモヤは続き事件を引き起こす。

ゲドはホートタウンに邪悪な匂いのする事、均衡を狂わそうとする者は人の欲ではないかと言う。
その欲に取り憑かれた者の正体は竜では無く魔法使いだと。アレンがそのことを実感するのはまだあとの話。
ハジアに取り憑かれた海賊船で風の司をしていた元魔法使いウサギと出会って二人は事件に巻き込まれる。
この時点までアレンはゲドのボディーガードであろうとしたが、力及ばず、襲われてガレー船へ。P 124〜125
ゲドは、アレンをボディーガードとしてこの旅の共に連れて行ったわけでは無く、旅の中で今の世界の状況を
肌で感じてどう対処すべきかを考える機会にしようとしていたのではないか。
ゲドはアレンを奪還して自分はアレンを供に連れて来たと見せていたけれども「ついて来たのは私の方だ」と語り、傷ついた
アレンの傍にいて大切な子どもにするように気遣った。ゲドはアレンを育てるためにアシストに回る。

*ちょっと〜、いくら若くて経験不足で将来を期待されるとは言え、テナーに対するほったらかしっぷりとは随分違うのでは?
 テナーはオジオンのところに押し付けられましたよね。その上テナーは自ら育って行くし。

今回の読書会では
●自然の均衡をまもる事について、竜の存在について確認しながら話が進んだ。
 竜は夢?日本の竜の捉え方とはずいぶん違う。
●そしてマハリオンの予言について、次回の内容にも関わるけれども変化していくことを確認。この変化は大事。
 この世界を取り仕切るものが魔法では無くなって行くと言うことなのか?
●そして、これまで「誠の名」が一つのキーワードだったが文章の中でゲドの呼び方が大賢人・ゲド・ハイタカとランダムに使われ始めたように感じませんでした?
●アレンの立場について
 父からロークへ使者として派遣→ゲドへの憧れ→ゲドに認められようと帯同する事になったが実は素直に喜べない。
 単にゲドが自分を買いかぶっているのではないかとも疑う→ゲドのボディーガードを失敗して自らも怪我と自信喪失
 傷ついたアレンを見守るゲドはここまでは悪に対抗する力を発揮するが、先に起きる様々な事についてどのくらい予見できたのだろうか?
●ゲド自身はもちろん均衡の綻びや何か魔法使いの力が弱まるような状況があり、安全な場所に屋根と壁のある環境に飽き飽きしているのでと旅に出る必然を語ろうとしているけれども、彼が壮年期を迎えて事に当たる力の残量についてどれほどだと認識していたのか?この物語の展開では後始末を守りの長がしてくれるとは期待してないようだし。
 もちろんアレンに託したいとの思いが前提とは言え、ゲドのチャレンジは実は無謀だと内心感じていたのか?
●今更だけれど、ゲドとオジオンの違いはなんだろうか?
●エンデの「モモ」や「はてしない物語」の話題も出て来たけれどもファンタジーの世界は、今見えている事象を語っているわけでは無く、ある象徴的な事を提示して物事の本質を伝えようとしている。読み手は象徴的な物語や表現を具体的な事象に落とし込んで現実に起きている事と照らし合わせて、あるいは当てはめて理解する。
 抽象化された事柄と具体的な事象の往復が物語を読む醍醐味と云えないだろうか?

次回3月15日  ゲド戦記3 最果ての島へ 5−8章

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