abe-yuuko
幼い時をすごしたところ、山ひとつ越した山に黒姫山がある。早春の峰に白いこぶしの花が咲いている。黒姫山は幹の美しい木がたくさんある。近くの妙高山ほど知られていない地味な山だ。春の訪れで緑のかすみがかかり、山がゆっくりと眼をさます。 その頃の忘れられない詩がある。 地の下には少しまぬけな配達夫がいて 帽子をあみだにペタルをふんでいるのだろう かれらは伝える 根から根へ逝きやすい季節のこころを <見えない配達夫>茨木のり子