新刊のおたより(4月)


幼い子どもの冒険物語
 大雨の日一平はひとりで留守番することになった。おじいちゃんの部屋には本がいっぱいあるので部屋に入っていった。そして、おじいちゃんの大きな机の下にランタンをもってもぐりこんだ。外では風があれくるっている。しばらくするといつのまにか一平は野原にまぎれこんでいた。どうもそこは草原のようだ。靴がおいてある。一平の足にぴったりだ。おそるおそるはいて歩くと、薄茶色のクッションのようなものにぶつかった。なんとクッションが 「おそかったじやないか」と口をきいたのだ。クッションと思ったのは巨大なウサギだつた。ウサギはぼくのことをキョチといって、その名前は前にきてくれた時につけてくれたという。ぼく
はおぼえていないけれどなぜかウサギのいうとおりキョチだとおもえた。そして、戻ってこないうちにここはキョチのくにではなくて魔女の国になったという。いままでの作品のように少し大きな子どもむけでなく小学校低学年が楽しめる冒険物語、作者特有のユーモアがいっぱいあって楽しめる。和製エルマーの冒険物か?
龍がでてきて、金平糖を食べさせると、龍は小さく縮んでいく。ひとりで冒険をする。少しずつ読み聞かせをしたらいいのにとおもう。特に学校の先生にぜひお願いしたい。日本の子どもたちが楽しめる本、家庭で読み聞かせをしてもらえない子どもたちがふえている現在、ぜひぜひ願っている。もちろんおとなにも自分読みにどうぞ!
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「机の下のウサキチ」 岡田 淳 作 偕成社刊 本体1500円+税10%

ぴかぴかのあかいねじ
 ひかるはさとしくんの家で遊んでいて、赤いねじを見つけました。さとしくんのおとうさんは消防自動車をつくる会社につとめています。そのねじは消防自動車のねじ、さとしくんの宝物です。ひかるはうらやましくてしかたありません。そんなひかるにさとしくんのおとうさんは消防自動車ができる様子を見せてくれるといいました。さとしくんのもっていたねじはどこの部分でしょうか。それを探しながら、消防自動車ができるまでが描かれています。知らなかったのですが消防自動車はいったん組みたてられても一度またバラバラにします。そして、検査をして、赤く塗ります。そして、最後の組み立てです。それに全部注文にしたがってつくるので、大量生産でなく、一台一台つくられるとのことです。いろいろとみているうちにねじはどこのねじかわかりました。いま、なぜか自動車は電車におされてひところより大人気ではなくなりました。でもはしご車を含めて消防自動車は人気の車です。私も大好きです。ぴかぴかしてとてもきれい(これは消防士さんがちゃんと手入れしてしているからにちがいありませんが)一度止まっていて(訓練にきていた)だれもいないのをみて、そっとさわってみたことがあります。陽に映えてぴかぴかしていました。車が嫌いな私ですが、一度乗
ってみたいとおもいました。くわしくは福音館の情報誌「あのね」4月号に載っています。
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「しょうぼうじどうしゃのあかいねじ」たるいしまこ 作
 福音館書店刊 本体1000円+税10%

昔話絵本(復刊新刊)  限定出版なので、お申し込みお早めに!

みんなつめて ! でも・・・
 さあ!ねよう。ライオン・うし・猫・ヒツジ・犬・なまけもの・クマ・アヒル・ヘビ。でもニワトリが言った。つめて!つめて。これではわたしが入る場所がないよ!つめて・つめて!でもつめたらどうなった。ライオンがおっこちた。ニワトリはもっと言った。つめて・つめて!そしたらこんどはうしがおっこちた。1〜9までつめるたびにおっこちる。とうとうみんなおっこちていなくなった。ニワトリはひとりきりになってさびしくなった。みんな戻ってきて!つめるたびにひきざん。ページをめくってひきざん。この本は算数の本ではないけれど数のおもしろさを上手につかってユーモアたっぷりの絵本になっている。動物たちの表情がおもしろく、楽しい。
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「つめて・つめて!」 ぶん カトリーナ・チヤーマン
 え ギリェルメ・カルステン やく 木坂涼 BL出版刊 本体1800円+税

人のかぞくのかたちは?
 まず「あたらしいいのちが育つために、ともに力を合わせるなかまを、ここでは「かぞく」とよんでみます。カラス、ペンギン、クマノミ、クマ、ゴリラを例にとって描かれています。わかりやすく描かれてはいますが、これは家族というより子育てではないかと思います。どの生き物もオスとメスのペアが子育てをします。役割分担があります。ただ、ほとんどがメスの役割と思いがちですが、かならずそうではない、けれど一方だけでは子育てはできない。自然の厳しさがあるからです。子育ての前にオス、メスが後から決まるクマノミのようなものがあります。それもふくめて、子孫を残していくための知恵といったら良いでしょうか。人を考えると子育てはどちらがになうのかという議論が多いですが、この生き物たちの例を考えると、性そのものを考えなければならない、自然界のように子孫を残すだけ素朴に考えていられない、むしろ生きていくのに人はどういう選択をしていくのかと考えなければらないようにおもいます。
「いろんないきものの生き方」こういうタイトルにすると子どもたちにはわかりにくいだろうか。人にいちばん近いゴリラを例にするともっとわかりやすいように思う。
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「いろんないきもの かぞくのカタチ」
澤口たわみ 文 たしろちさと 絵
福音館書店刊 本体1400円+税10%

がっこうがはじまるよ
 テンのてんこちゃんは1年生になりました。クラスはみんなで(てんこちゃんをいれて)10人です。てんこちゃんははじめてのことがにがてです。どうしようとドキドキすると、あたまのなかにどうしよ
うおばけがあらわれます。どうしよう!どうしよう!と。4月になって、ことしは入学式に桜が満開でした。どうしよう!どうしよう!おばけがあらわれた子どももたくさんいたことと思います。だいいちクラスが10人ということがありません。いまの子どもはきょうだいも少なく、近所にあまり友達がいなくて、ともかく人になれていません。そして、学校のように規則にのっとって生活することがなれていません。それになによりもお勉強がまちかまえています。どうしよう!どうしよう!
 この本は読んでもらう本ではありません。どちらかというと一人で読んだほうが良いとおもいます。読むことができるようにマンガになっています。おとなが読み聞かせにつかうと悪くするとお説教らしくなってしまいます。”心配ないよ”なんていわないで、もちろん学校のようすを根ほり葉ほりきかないように。なるべく体を動かす、なにかをいっしょにするのが良いとおもいます。4月、5月は風薫月、散歩したり、遊んだり、料理をしたり、土にさわったり、そしてくたびれたらてんこちゃんの本をどうぞ渡しましょう。続編があります。
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「がっこうのてんこちゃん」はじめてばかりでどうしょう!の巻 ほそかわてんてんさく 
福音館書店刊 本体1100円+税10%

地下迷路のわすれもの
 主人公、松田コロンは私立探検家学園の二回生、夏休みの初日、流ちゃんの話によるとジム・スコットが帰ってきていないとのことだ。PESにかけつける。ウェハースは二回生の15人が三つの班にわかれて、ジムは四班めの上級生チームにいた。そしてそれだけが巨大結晶がありそうなかんじの鉱山についていた。ジムは鉱山の手前で引き返したという。ミウラ先生が探しにいくという。オラータデラータの鉱山<ウクパチャじごく>へ、キム、ナガル、コロン、アリカ、そして探偵江上仗助、ミウラ先生と出発だ。物語はスピードをあげて展開する。それでもわかる、それは著者の文章力か。物語のなかに歴史がはさまれていて、そのことも物語をおもしろくしている。並行世界のはなし、コロンの名前の謎。戦いの後、コロンたちは学園に帰ってくることができた。ジムも救出できた。けれど彼女たちの前にあらわれた学園の歴史と謎にコロンはあることを考える。祖父と父に会うコロン。終盤はコロンは学園をやめようとなやむ。ときどきはいっている見開きの絵がすごい。5が秋に刊行とのこと、楽しみだ。
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「私立探検家学園4」地下迷路のわすれもの
 斉藤倫 桑原太矩 福音館書店刊 本体1300円+税10%

 ここは動物ホテルです
おかの上の小さなホテル。カンガルーのステッドさんが経営しています。朝一番にコーヒーをのんで始まります。それからホテルのあちらこちらがちゃんとはじまるか、みまわりをします。働いている人だけではありません。お客さんもいろいろなのでちゃんと見て回らないとなにがあるかわかりません。いましがたもウサギの家族が到着しましたが、やんちゃな子ウサギが道に飛び出しました。でもステッドさんはひとっとびで子ウサギをつかまえてしまいました。ステッドさんのすぐれ技は飛び跳ねること、空まで飛び跳ねることができるのです。ここは動物ホテルです。動物たちの得意技をつかってステッドさんはなんなく問題解決です。動物たちがたくさんでてくるので、動物好きの子どもたちは楽しめる絵本です。にぎやかな楽しい絵本です。
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「ステッドのホテル」こどものとも 5月号
くらささら ぶん 嶽まいこ え 福音館書店刊 本体418円+税10%

こどもたちのきもち

 女の子がとぼとぼ歩いていく。新しい学校やだな!って。「おんなかおとこかなんかよりもっとましなこときけないのかな」「どっちでもいいじゃん」こどもがつぎつぎという。「どうして本ばかり読んでいる」「答え 本はいのちだから」「どこのくにの人って聞かれる」「ここだよここがわたしのくに」ページ左にいつも聞かれること。右ページにこどもの答え。どんどんこどもがふえていって、いろいろなこどもたちの答えが画面いっぱい。どんな自分か知って欲しい。できないことよりできることをたずねて欲しい。こどもたちが声いっぱいにさけんでいそうだよ。今の日本の子どもたちはもっといわなくちゃ!そして、おとなはもっと聞かなくちゃ!
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「じぶんのきもち みんなのきもち」サラ・オレアリーさく
 チィン・レンえ おおつかのりこやく あかね書房刊
 本体1600円+税

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