新刊のおたより(10月)


りっぱな角
 ちょっとした観光地なら鹿はいます。鹿は子どもたちにクマについで人気があります。それはつぶらな瞳とりっぱな角のせいだと私は思います。ひところ他の動物と同じように害のことがいわれました。木の芽などをみんな食べてしまうからです。この絵本の鹿は北海道にいるエゾシカです。
北海道に住んでいる作者はいつものように、たくさんの野生の動物にであいます。秋、家に帰ろうと思った作者はりっぱな角をもったオスの鹿にであいます。エゾシカです。りっぱな角を持った、オスの鹿の話、あのりっぱな角は毎年はえかわるそうです。ちっちゃな角は季節がかわるとどんどん大きくなって、冬を越して春になる頃、鹿の角はぽろりととれて小さな角にかわります。痛くないのかな?寒い冬、動物たちは懸命に生きてゆきます。もうすこしたつと雪が降って、どこもここも真っ白、そのなかエゾジカはどこで春を待っているのでしょうか。
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「エゾシカ」こどものとも 11月号
 えとぶん MAYA MAXX 福音館書店刊 本体418円+税10%

つながる人の思い
 今日も人の思いがつながる。それは生きていることの証。朱美は任期5年のある大学の助教だ。萩焼きの土の一種見島土を調べている。そのなかでよくわからないけれど焼き物については尋常
でない腕と知識をもっている光平と知り合う。土には土のなりたい形があるというじいちゃんの言葉を信じて見島土を探している。それは光平にとって人になる唯一の道だ。
 日本オオカミと奈良の山奥で出会う、都会から逃れてきたwebデザイナーのまひろは、どんな人
の中にも程度の差はあれ人とオオカミがいると思うようになった。それは多面的にものを考える力だ。
 両親が死んでじいちゃんに育てられた姉妹、姉も家をでていく。中学生になった沙月は浜で孵化するウミガメの卵を家に隠して自分の手で子亀を誕生させようとする。姉との絆をわすれない沙月の思いだ。
 原爆が落ちた浦上の石を集めていた男の話は原爆で自分だけが生き残ったという慟哭の思いを受け継ごうとする男の歴史だ。
 アイヌの「星の川」を義父の命のために証明しようと思った涼子の思いなど。辺境にちかいところで受け継ぎ生きている人たちの生の営みが、5編の物語のなかに描かれている。作者は綿密な調査をつないでこの5編の物語を語る。先日読書会で「宙わたる教室」を取り上げ参加者に好評だった。それは定時制高校が舞台の物語だったが綿密な描写のなかに登場人物の心理が巧みにおりこ
まれていて、小説世界だとしても生への賛歌が描かれていて、生きていく力になると好評だった。
一般書で出版された本だけれど若い人たちにもぜひ勧めたい。
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「藍を継ぐ海」伊与原新 作 新潮社刊 本体1600円(税別)

手話絵本
 手話の絵本、2冊目です。前回もそうでしたが、たんなる方法のテキストの本ではありません。物語はハルとレオが友達になるおはなしです。ハルはろう者です。一方レオはゴーダです。ゴーダというのはきこえない、きこえにくい親に育てられたきこえる子どものことです。ある日ハルの目の前に紙飛行機がとんできました。あらわれたのはレオ、ここから手話がはじまります。「ひこうき きみの?」「うんありがとう」下に手話が描かれています。そしてふたりは知り合い、手話で会話をして、友達になって、またいっしょに紙飛行機をとばす約束をします。本を見ながら手話の練習をしてみました。正直なかなか難しい、でも本を見てもいいけれど、いっしょに手話をしてみたら良いのではないかとおもいました。(まゆげをあげるのがうまくできなかった。)作者の絵はとてもわかりやすい、少し練習をしたら良いと思いました。こども同士はきっと早くできるようになると思います。学校で英語を勉強すると同じように必読教科になったら良いのにとおもいます。
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「ともだち」みることば さわれることば 手話えほん2
 スギヤマカナヨ・作 吉岡昌子・手話監修
 あすなろ書房 本体1600円

視覚障害って
 ダックスフンドのアデラには最近不思議なことばかりおこります。靴下をいくら探してもみつかりません。また、仕事場に行くのにいつもの建物が見つからなかったり、実験を失敗したり。今日は友達に会う日です。友達に最近の変なことをはなしました。いろいろなものがなくなっているわけではないことがわかりました。それならどうして?じつはアデラの目が見えなくなっていたのです。でも見えなくとも匂いなどではちゃんとわかりました。本を開くと丸い穴があいていて、おはなしがすすむにしたがって穴は小さくなっていきます。アデラが見える範囲がせまくなっていくのです。不思議なことの理由はわかりました。後ろの解説には視覚障害のことについて、また手助けをする際の注意がついています。アデラは「網膜色素変性症」という病気だったのです。そして、人の能力は見る能力だけではない、匂い、触覚などほかの能力をつかうということも可能だということです。現代は科学が発達して、うまくいかないこともカバーしてくれるようになりました。そして、助け合う、おたがいにおぎなうこともできます。じつは私の母も「網膜色素変性症」でした。それがわかったのは中年過ぎでした。まっくらになるわけではないので、不自由だったのですが、経験などでそれはそれなりに生活していました。この本を読みながら母のことをおもいだしました。
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「わたしのくつしたはどこ?」ゆめみるアデラと目のおはなし
 フロレンシア・エレラ 文  ベルナルディータ・オヘダ 絵
 あみのまきこ訳 岩崎書店刊 本体1700円+税

ぼくのぼうけん
 なんでもできると思っているちいさなハリネズミ。それを見守る大きなハリネズミ。秋のある朝、庭では落ち葉がいっぱい。大きなハリネズミは落ち葉を集めにとりかかります。小さなハリネズミはそれを見ていて、ぼくにもできるよ!好奇心いっぱいの小さなハリネズミとそれを静かに見守る大きなハリネズミ。秋いっぱいのなかにつぎつぎに挑戦する小さなハリネズミの🚶声と満足な声が聞こえてきます。子どものための絵本というより、おとなのための絵本かもしれません。色鮮やかなコラージュの絵本は、子育てに悩んでいる人に応援している絵本かもしれません。
できるよ!できるよ!子どもの声が聞こえてきます。
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「できるよ できるよ」ブリッタ・テッケントラップ 作・絵
 木坂涼 訳 ひさかたチャイルド刊 本体1400円+税10%

共存するって!
 ちょうどラジオでクマの話をしていた。いま、クマは冬の冬眠のため、たくさん食べなければならない、そのことから里に下りてきて、トラブルがおきる、その対処の方法を話していた。今年は暑さもあって、どんぐりなど凶作とのこと、里に下りてくるクマに対して気をつけることを話していた。はからずしも今月号はそのクマとどうやって共存していくかがテーマです。舞台は軽井沢、ここでいうのは本州にいるツキノワグマのことだ。クマの習性と一年の生活が細かく描かれている。場所によっては隣の友人?なのだ。そして、共存していくために軽井沢ではどんなことをしているのかが順をおってていねいに描かれている。今年は木の実が暑さで不作、当然となりあわせの街の人たちの生活圏にはいってくる。たくさん食べて冬眠、出産、子育てとクマにとっては大変な時なのだ。ラジオで言っていた。柿を残さずにしっかりもいでしっかり保管してくださいと。柿は甘くてクマにとってはおおごちそうだという。人手がなくて、もがないままにする、落ちたものなどもしっかり始末しないままにしないようにと。科学の力を借りたり、専属の犬の力を借りたり、これはクマにかぎらずイノシシやサルや野生の動物と共存することの知恵が書かれている。それにしてもメスグマはなんと偉大なことよ。
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「となりにすんでるクマのこと」たくさんのふしぎ 11月号
 菊谷詩子 文・絵 福音館書店刊 本体736円+税10%

おちばであそぼう
 赤、黄、土色落ち葉が舞うよ。くるくる、くるくる落ち葉が舞うよ。
僕は今日森に行った。歩くたびにしゃくしゃく、がさごそ。僕のまわりは落ち葉だらけだ。風にのって踊るよ落ち葉。落ち葉のちょっとしめった匂い、太陽の匂い、いい匂い!
 落ち葉を積み上げて、せぃのぉ!落ち葉の山にとびのった。落ち葉の間にもぐりこんで、せぃのぉ! かぜの音、落ち葉が歌う。秋の一日、ぼくは落ち葉と風とお陽さまと遊んだよ。
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「おちば」おーなり由子 ぶん  はたこうしろう え
 ほるぷ出版刊 本体1500円+税

ひと夏のこと
 ぼくはフロリダ州で母さんとおじいちゃんと住んでいる。小学校最後の夏休み、トミーと「生き物発見ノート」を完成させようと思っている。「生き物発見ノート」にはぼくたちが見つけた、出会った生き物を左ページには絵を右ページにはトミーがその説明を文で書くことにしている。
二ヶ月半の夏休みの間後6種類の生き物を発見すればおわりだ。僕は母さんとおじいちゃんと住んでいる。父さんは以前家をでていった。でも時々母さんとは連絡をとっている。母さんはここでは有能な不動産仲介者、おじいちゃんはアルツファイマーという認知症、昔の仕事から工具をつかって直すのが得意、けれども病気のせいでうまくとはかぎらない。ぼくはしなければならないことがたくさんある。トミーと「生き物ノート「を完成させること、母さんの手助けをして母さんが仕事に行く時にはおじいちゃんの面倒をみなければならない。ぼくとトミーのかけがえない友情、おじいちゃんのこと、母さんの仕事にかかわる、解らず屋の金持ちレイリーさん、ぼくがインディゴ川で怪我をしたマナティーを見つけ助けようとすることから、たくさんのことがおしよせてくる。ぼくはみんなうまくやれるとおもっていた。幼い頃から少し大人になろうとしている男の子の思いが
次々書かれていて、読者はそうだ、そうだと読み進めていくことができる。心理描写もふくめて、読者をひっぱっていくのはリアルに巧みにそのことが表現されているからだろう。(ちょっと母さんがかっこよさすぎるけれど)現実はこんなにうまくいくはずはないとおもいながらも、現実の重みでつぶされそうになっている子どもたちへ希望の本になると思う。「トミーとインディゴ川の中に立っていたぼくは、とつぜん世界の大きさを思いしった。おそろしいくらい大きい。P352」
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「マナティーがいた夏」エヴァン・グリフィス 多賀谷正子訳
   ほるぷ出版1600円+税

とんだのはだれだ!
 きいろいはっぱ 赤いはっぱ。風がぴゅーうと吹いて、はっぱがとんだ。こねずみ3匹
はっぱといっしょにとんだ。空高くはっぱがとんだ。ひゅう ひゅう ぱら ぱら 
くるり ざわ ざわ ざわん ぷか ぷか ぷかり ぷう ぷう ぐる ぐる ちょろ ちょろ
 はっぱは ひらひら ひらひら ひらり 言葉がたくさんおどります。こねずみ3びきおどります。あぁ!かあさんかえってきた ねずみのおうちで はっぱといっしょにおやすみなさい。
紅葉したはっぱがとってもきれいです。こねずみもたのしそう。
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「とんだ とんだ はっぱが とんだ」
こどものとも年少版11月号 福音館書店刊 本体418円+税10%

どんどん大きくなったおやま

 やった!おやまがどんどんおおきくなった。というか20年8月に月刊誌ででいて、ファンは
まっていた。月刊誌では見る人が限られているからだ。著者の本、ファンが多い。

 身近にいる人たちがでてくる。
なにか目的にむかっていく。それも無理をするのではなくいつものなかのちょっとした思い付きが、どんどんふくらんではじめはただ見ている人もいつのまにかいっしょになって進んでいく。そして🌞あぁ楽しかった。この本の中にはお山作りに参加しないこどもが描かれている。付録の「せっせ新聞」によると名前はまもるくん、見る方が好き!とのこと。付録の「せっせ新聞」は本を見るのが楽しくなるみんなのコメントがいっぱい。子どもにかえってせっせ せっせとお山をつ
くりたくなった。ポンペンペン ポンペンペン・・・・・・と。サイン本の申しこみ受け付けています。
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「せっせ せっせ」花山かずみ さく
     福音館書店刊 本体900円+税10%

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