
さあ!飛ぶよ どこに降りる?
ある日1本の松の木からタネが飛び出しました。タネの大冒険です。新しい場所を目指して。
でも、残念ながら道路に落ちてつぶされたり、川に沈んで魚に食べられたり、もちろん鳥たちは喜んで食べてしまいました。最後に残った1このタネは芽を出し1本の木になったけれどもウサギが全部食べてしまった。何にもなくなっちゃったね。残念!でも鳥に食べられたタネはうんちと一緒に出てきたり、岩に降り立ったタネは割れ目から伸びたり、埋められたタネは土の中から芽を出してなんだかんだと10本の木になったのだ。木はきっと何もかもうまくいくと、知っていたんだね。
独特の絵はタネの冒険をわかりやすく、面白く描いています。最後のページではいろいろのタネの冒険が載っています。ユーモアいっぱいの絵本です。
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「100このタネがとんでった」イザベル・ミニョス・マルディンス文 河野ヤラ政枝 絵 木下眞穂 訳 岩波書店刊
本体1500円+税

なんだかわかんない?
ある家で植物が暮らしています。いろいろにまきつき、大きくなっています。ある雨上がりの時、地面から小さい芽が出てきました。きみの名前は?わからない!大きくなってきて、ツルが伸びてきました。倒れそうになるとまわりの草や木やそばにあるものに巻きついてぐんぐん伸びていきます。でもやっぱり名前はわかりません。巻きつかれた植物はいろいろな巻きつきかたをしています。でもとうとう壁一面に花が咲きました。名前は「朝顔」でした。物語を読んでいるような構成になっています。こんな科学の絵本もあるのですね。とてもわかりやすい楽しい絵本です。時々猫が顔を出しますよ。「いろいろな つるしょくぶつのそだつにわ」という副題がついています。たくさんのつる植物が描かれています。
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「きみはなんのつる?」大野八生 福音館書店刊
本体1500円+税10%

わからないこと、わからないんだよ
中は4年生になってから時々女の子が校舎の2階の窓から体を乗り出しているのが見えるようになった。学校へ行きたくない重い気持ちを引きずって、学校に行く。中は”わかんない”と言ってみんなの笑いをかう。胸がくるしくなる。幼友達のセンくんは「真面目でなくなることが夢」と言って、怪しいことを調べたりする。中の両親は別居生活を始めた。パパは家電量販店に勤めていたけれど、自分の生き方に迷い、故郷に戻る。そこは原発ができることに反対していた今は亡い母親の生活場所だった。ママは童話を書きながら小さな地方紙を出しているところに勤めている。中の「わかんない」という気持ちを一番わからないのは学校=教師。特に担任は理解しようとしない。今の生活の中でわかっている人はどれくらいいるのだろうか?わかるということはどういうことなのだろうか?作者は子どもの持っている気持ちをいつもしっかりと見ている作品が多い。現代の日本の作家では数少ない書き手だ。子どもたちの意見を聞いてみたい。
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『わたし、わかんない」岩瀬成子 講談社 本体1400円(税別)