
あらしの島で
さあ出かけよう。嵐の来る前に。鳥はねぐらに帰り、畑では飛んでいきそうな洗濯物を追いかけている人。砂利道を手をつないで進みます。だんだん風が強くなってきました。”お兄ちゃん” 手をつ
ないで岩の上に。嵐が来るぞ。もう気がすんだ!手を引っ張って引っ張られて前に進む。どんどん歩いていく。”もう帰った方がいいよ” もう気がすんだ!それともまだ!街は空っぽ。ゴロゴロ、ドーン!走れ!あたりは真っ暗、家はどこだったっけ!手を引っ張ったり、引っ張られたり。
走れ!自然の描写がすごい。必死でかける兄妹。今にも飲み込まれそうなあれた海、こわく、美しい自然、不安とやがて訪れた希望に満ちた朝。”さあ、また手をつないでいこう!”自然の大きな力を描ききっている。秀作。
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『あらしの島で」ブライアン・フロッカ文
シドニー・スミス絵 原田勝 訳 偕成社刊
本体1700円+税

ラッキーは泳ぎの天才
ラッキーは幸せだった。おかあさんにまもられて大きくなりました。誰よりも早く泳ぐことができます。けれど、ある日ラッキーを守っていた海藻が解けてお母さんとはぐれてしまいました。そして海に運ばれてきたラッキーは人間に助けられます。もちろんラッキーは人間がどういうものか知りません。怯えていたラッキーに人間はだいじょうぶと言ってお母さんの代わりにいろいろなことを教えてくれました。海に戻る日がきました。ラッキーは海に戻ったのですがサメに襲われて怪我をして、人間に運良く助けられました。海に帰られなくなったラッキー。でもまだラッキーのすることはあります。ある日ラッキーの元に昔の小さなラッキーのようなラッコが連れてこられました。泳ぐことの楽しさをラッキーは教えたいと思います。この物語はカリフォルニア州モントレー湾にあるモントレーベイ水族館の2頭のラッコ、ジョイとセルカを元にした物語です。ラッコは絶滅危惧種とされています。もっと興味のある人はhttps://www.montereybayaquarium.orgを開けてみてください。
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「ラッキー」あるラッコのものがたり キャサリン・アップルケイト作
チャールズ・サントン絵 尾高薫 訳 偕成社刊 本体1800円+税

みんななにしているのかな
もりにはどうぶつがいっぱい。最初にやってきたのはあかりす。あかりすはキョロキョロ、そして木の実をかじったよ。次にやってきたのはらいちょう。今は夏なので、白い洋服でないよ。羽を広げてどうしたの。次々にもりのどうぶつがやってきます。みんな食べたり、お昼寝したり。いろいろなどうぶつたちがいます。そして、いろいろの仕草でリズムカルな言葉のなか登場します。
写真絵本です。どうぶつたちの背景の森の様子も楽しんでください。幼い子どもの動物の絵本です。
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「もりのどうぶつ」おおたけひでひろ 文・写真
福音館書店刊 本体900円+税10%

難病と友情物語
じつを言うと読むのにかなり手こずった。中学2年生のテスの転校から物語は始まる。テスはなにかとみんなの中に入ろうとするがなかなかうまくいかない。テスは父親が急死したために転居して新しい生活を始めることになった。父親はベイカリーの店を持っていた。お菓子作り、テスもその血を受け継いでお菓子作りは天才肌、コンクールに出ようとしている。けれど内緒にしていることがある。時々お腹が痛くなる。お腹の中でヤマアラシが暴れるというくらい辛い、そしてそれはどんどんひどくなる。お菓子作りという武器でクラスのみんなと仲良くなりコンクールに出ようとする。けれどヤマアラシの攻撃はひどくなりとうとうトイレで倒れてしまう。テスを応援する友達との友情がこの物語の一つ、もう一つはコンクールに参加すること。友情の方は個性豊かな子どもたちの描写がよくかけていて楽しい。最後の方にテスが倒れて病院の検査の結果、テスはクローン病だということがわかる。それでもテスと仲間たちは負けてはいない。今は死んでしまった父親のこと。そして文中お菓子作りのことがしっかり描かれているのだけれど、あまりにも細部にわたって描かれているために、読み進むのが正直大変だった。(この描写は必要なことなのだけれど)暑さの中、読み進むのはちょっとつらかった。破茶滅茶の妹がいい、重くなりそうな物語をチームと妹が救う。作者は親子で、子どもの方がクローン病とのこと、最後にはこのことにも触れている。まだ治療法のわからないクローン病との戦い、テスも仲間もだいじょうぶ!
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「チーム・テスならだいじょうぶ」カービー・ラーソン&クイン・ワイアット作
鈴木出版刊 本体1700円+税

地球はエネルギーに満ちている
暑い暑いと消耗する毎日です。おまけにいつ止むともなく世界中で戦争が!もうこんな世界はたくさんと言いたくもなりますがこんな世界にしたのは私たち。地球も太陽も月も休むことなく私たちに生きていくエネルギーを注いでくれます。画家の絵はそんなエネルギーの塊のような絵が画面いっぱいに広がっています。世界は全部繋がっています。人類は海で生まれ、陸に上がって進化をたどったと言われています。母なる海、みちひきみちかけ月、みちひきみちかけ。とてもダイナミックな絵本です。
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「みちひき みちかけ」ミクロ コマチコ 小学館刊
本体2000円+税

土の匂いがしない
出てくるのは男の子と女の子と犬だけ、そしてはたけを耕して収穫するのだけれど土の匂いがしない。淡々と話は進む。日本のこういう絵本では見られない。けれど紛れもなく畑をたがやして収穫して、料理をして食べる。最後には収穫の歌を歌っておしまいです。でも読んでいて不思議なことに
実際畑の作業をしているような気分になります。これは文の力でしょうか。絵ではそんな調子なのにユーモアいっぱいです。犬だけが表情豊かです。「うさモグラ」動物たちが取り囲んでこれは一体なんだ?!絵に思いいれがないのに楽しいことが伝わってきます。2年前の夏出版された絵本です。
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「ぼくらのはたけ」マーガレット・ワイズ・ブラウン イーディス・サッチャー・ハード作
ガートルード・エリオット 絵
木坂 涼 訳 好学社刊 本体1500円+税

さあ!飛ぶよ どこに降りる?
ある日1本の松の木からタネが飛び出しました。タネの大冒険です。新しい場所を目指して。
でも、残念ながら道路に落ちてつぶされたり、川に沈んで魚に食べられたり、もちろん鳥たちは喜んで食べてしまいました。最後に残った1このタネは芽を出し1本の木になったけれどもウサギが全部食べてしまった。何にもなくなっちゃったね。残念!でも鳥に食べられたタネはうんちと一緒に出てきたり、岩に降り立ったタネは割れ目から伸びたり、埋められたタネは土の中から芽を出してなんだかんだと10本の木になったのだ。木はきっと何もかもうまくいくと、知っていたんだね。
独特の絵はタネの冒険をわかりやすく、面白く描いています。最後のページではいろいろのタネの冒険が載っています。ユーモアいっぱいの絵本です。
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「100このタネがとんでった」イザベル・ミニョス・マルディンス文 河野ヤラ政枝 絵 木下眞穂 訳 岩波書店刊
本体1500円+税

なんだかわかんない?
ある家で植物が暮らしています。いろいろにまきつき、大きくなっています。ある雨上がりの時、地面から小さい芽が出てきました。きみの名前は?わからない!大きくなってきて、ツルが伸びてきました。倒れそうになるとまわりの草や木やそばにあるものに巻きついてぐんぐん伸びていきます。でもやっぱり名前はわかりません。巻きつかれた植物はいろいろな巻きつきかたをしています。でもとうとう壁一面に花が咲きました。名前は「朝顔」でした。物語を読んでいるような構成になっています。こんな科学の絵本もあるのですね。とてもわかりやすい楽しい絵本です。時々猫が顔を出しますよ。「いろいろな つるしょくぶつのそだつにわ」という副題がついています。たくさんのつる植物が描かれています。
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「きみはなんのつる?」大野八生 福音館書店刊
本体1500円+税10%

わからないこと、わからないんだよ
中は4年生になってから時々女の子が校舎の2階の窓から体を乗り出しているのが見えるようになった。学校へ行きたくない重い気持ちを引きずって、学校に行く。中は”わかんない”と言ってみんなの笑いをかう。胸がくるしくなる。幼友達のセンくんは「真面目でなくなることが夢」と言って、怪しいことを調べたりする。中の両親は別居生活を始めた。パパは家電量販店に勤めていたけれど、自分の生き方に迷い、故郷に戻る。そこは原発ができることに反対していた今は亡い母親の生活場所だった。ママは童話を書きながら小さな地方紙を出しているところに勤めている。中の「わかんない」という気持ちを一番わからないのは学校=教師。特に担任は理解しようとしない。今の生活の中でわかっている人はどれくらいいるのだろうか?わかるということはどういうことなのだろうか?作者は子どもの持っている気持ちをいつもしっかりと見ている作品が多い。現代の日本の作家では数少ない書き手だ。子どもたちの意見を聞いてみたい。
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『わたし、わかんない」岩瀬成子 講談社 本体1400円(税別)