
戦争とは?
青春時代あまり良い印象は残っていない。なんとか自立したいともがいていた。でも今になって思うと、苦しかったけれど良い時を送っていたように思う。
この本の主人公のように外から踏みにじられるようなことはなかった。受験戦争の幕開けもまだ本格的にはなっていなかった。この物語の主人公モミザは作者の母親とのこと。美しいものに憧れた少女は戦争が台無しにした。けれどモミザの心は美しいまま。でも他方美しくない状況のまま死んでいった、たくさんの人がいる。せめてそれらの人の名誉、心だけは美しく死んでいった人の名誉のため、この本を伝えたいと思う。すでにものいわないそれらの死者のために、言葉で残していきたいと思う。青春の苦しさと戦争の苦しさは同じではない。
「美しくない青春」 さ・え・ら書房 小手鞠るい 著 1600円(税別)

私は誰に約束するのだろうか
もう随分と経ってしまったが、ある団体で那須さんをおよびしたことがある。開演前で少し時間があって少しの時間で話をした。突然、「あなたが一年生の時の国語の教科書は何から始まりましたか?」と尋ねられて居合わせた人は顔を見合わせた。「『さいたさいたさくらが咲いた!』『たろうさんはい! はなこさんはい!』ですか?」漠然としていた自分の立ち位置、歴史が身近になった。その時、那須さんは2歳?3歳?広島で原爆にあったということを知った。ズッコケ3人組の一連の本の印象が強くて、那須さんがどんな思いで本を子どもたちに手渡そうとしていたのか、ちよっとわかったような気がした。私は那須さんとは同時代だ。私は子どもたちに「戦争は絶対嫌だ」と叫び続けられるだろうか。残念ながら那須さんは2021年に亡くなった。この文は2013年ごろ広島の被曝70年に合わせて「ばあちゃんの詩(うた)」という題で書かれたものだという。
「やくそく ぼくらはぜったい戦争しない」ポプラ社 那須正幹 作 武田美穂 絵
1800円(税別)