バローツ人の昔話
あるところに貧しい夫婦が住んでいました。一人息子はヤーノシュといい、ある日仕事を探して家をでました。ヤーノシュは心優しい子どもでしたので旅の途中、困った生き物を助けてお礼に笛をもらいました。そしておそわったとおりに王様のところへ行って仕事をもらいましたが、難題が与えられてできなければ首をはねてしまうといわれました。その度、助けた生き物たちからもらった笛を吹いて呼び出し助けてもらいました。よくある昔話です。ただちょっとちがうのは王女と結婚もしない、領土も貰わない、ただ金貨だけをもらって両親のところに帰り幸せに暮らしたとなっています。これはバローツ人の気質かもしれません。そのせいかお話は淡々としています。この絵本のもう一つの特徴的なのは絵の色がとても深く幻想的なことです。青、藍が綺麗です。空、海、夕暮れ、夜、王女たちがカラスに姿を変えて飛んで行ってしまうページ、東欧の特色が良くでています。画家はスロバキア在住。
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「みっつのふえをもらったヤーノシュ」ハンガリーの昔話
こどものとも2月号 とうのしぼ 再話・絵
福音館書店刊 本体418円+税10%
おはなし大好き
おはなしだいすきな人よっといで!でもおはなしっていったいどこからきたのかしら。
この物語はアフリカ、ズールの人々に伝わっているものを木版画の多色刷りの絵本にしたものです。主人公のマンザンダバは子どもたちに聞かれてお話を探しにいきます。途中で会った動物たちに聞きますが、誰も教えてくれません。やっとウミガメに乗って海の底の宮殿の王様に教えて貰えることになりましたが、かわりに欲しいものをいわれます。それは陸の人たちがどんな生活をしているか、目に見えるように教えてくれということでした。マンザンダバの夫は木彫りの名人、王様はそれで大喜びで教えてくれました。
昔話の力強さを表現、リズムの良い文がとても楽しい良い絵本になりました。さっそくみんなに読んでやりたい!
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「おはなしはどこからきたの?」さくまゆみこ文
保立葉菜 絵 BL出版 本体1800円
信号はだいじ
この乗り物の本はいつもとはちょっとちがっていておもしろい。子どもたちは乗り物の本が大好きだ。けれどほとんどが機能的な観点で描かれている。速さとか、種類とか。実は私は車がにがてだ。乗り物酔いがひどいこともあるけれど運動神経がにぶい私は運転するのもあまり嬉しくない。免許取立ての頃、車庫入れと、車線変更が嫌だっ
た。走っていて道路に大型車が止まっていて、車線変更をしなければいけない時はどきどきした。車が走っていれば、ゆっくりと後を走れば良いのだけれど、止まっていたりすると、嫌でも車線変更をしなければいけない。そして、追い抜くとまたもとの車線に戻らなければならない。店をするにあたって嫌だけれど免許を取らなければいけない。胃が痛くなった。この本はウインカーを出す、合図をする本だ。「まがりまーす」「とまりまーす」チッカ!チャッカ!合図をだして走る。そのタイミングにドキドキする。たくさんの人が車がだす信号にしたがって走ったり止まったりする。今日も事故のないように!
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「まがりまーす とまりまーす」ちいさいかがくのとも 2月号
鎌田歩 さく 福音館書店刊 本体418円+税10%
ワニくんって?
ママ、今日、園にあたらしいおともだちがきたんだよ。名前は?ワニくん。えっ。ワニなんだよ。どうもまことくんの話はほんとうのようです。大きいワニくん。おべんとう生の肉。えっ!危険じゃないかしら。ママたちの心配はなんのその。ワニくんはまことたちとすぐに仲良しになります。ふしぎなことにワニくんはじいじにそっくりです。寝言も紙芝居を見ている時もじいじのように悲しがって泣いたりします。でも、ある日、ワニくんはいなくなってしまいます。まことくんにママはアルバムをみせてくれました。あっ!じいじとワニくんがいました。
この絵本はいろいろに読めます。異文化との出会い、また死んでしまったら人はどこにいくのでしょう。たしかなことはいなくなっても心のなかにずっといるということです。そしてもいつでも会いにきてくれます。
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「ワニんがやってきた!」塩野米松・原案
飯野和好・翻案・絵 農文協刊 本体1500円
あなたのゆめはなんですか
ゆめっていったって、起きている時、それとも寝てる時、夢見ないんだなぁ。起きている時の夢は、とおにあきらめた。あれもやりたい、これもなりたいってずいぶんたくさん思ったけれど、どれもうまくいかない。お金がなかったり、時間がなかったり。そして、いつのまにか何をやりたいのかさえわすれてしまっておとなになった。
ところがある日、冬にはめずらしく青空の続いた日、久しぶりに散歩から帰った夜、ゆめがきた。なんだかいろいろの夢、寝ていると夢がやってきた。ひとりぼっちでなく昔飼っていた猫がいっしょ、夢がやってきた。背中をのばして大あくびをした。昔の友だち、けんかもしたけれど、いっもいっしょにいられた。そういえば引越したときハイタッチをして別れたんだっけ。泣かなかったよ。また会えるからって。でもいつの間にかおとなになって知らない街でひとりで暮らしていた。ある夜、夢がやってきた。夢どおしがくっついて、公園で大きな声をだしておっかけっこをした。夢がやってきた。ちょっとくたびれたので今日はこれでおしまい。明日も夢がやってくるといいなぁ。
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「ゆめがきました」三好愛 ミシマ社刊
本体2200円+税